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2006年11月 アーカイブ

2006年11月06日

ラヴリィな存在達について

061106.jpgsporeでは巻頭にインタビューを掲載していますが、今号では田口賢司さんをインタビューさせていただきました。1994年に発表された『ラブリィ』は文芸評論家・福田和也さんに「90年代最高の傑作」と評され、一昨年に発表された『メロウ』は浅田彰さんが審査員を務められた第14回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞しています。実は個人的にも田口さんの以前からのファンでして、『ラブリィ』以前の『ボーイズ・ドント・クライ』や『センチメンタル・エデュケイション』も愛読していました。

また田口さんはTVプロデューサーとしてのキャリアをお持ちの方で、現在はジェイ・スポーツ・ブロードキャスティングにて『Foot!』や『バルサTV』のプロデュースをされています。ですから、ちょっと異色なキャリアを持つ作家の方と言ってもいいかもしれません。それはキャリアだけではなく、小説の作品においても当てはまります。物語の構造が消滅しかかったところでの散文詩的な言葉、あるいはすぐさま目の前に浮かび上がってくるような鮮やかなイメージ、そして非常に独特である空虚さ。そういったものがセンチメンタルさやユーモアを伴ないながら響いてきます。

そういった特徴のある田口さんの作品はどのようにして生まれるのか?このことに僕自身以前から興味があり、その点についてインタビューをしたいと考えていました。また、僕自身かなりのサッカーファンであり、田口さんのTVプロデューサーとしての在り方も聞いてみたい、そしてテレビをつくることと小説を書くことの相関性みたいなものはあるんだろうか?なんてことを田口さんにインタビューにて聞いてみました。今号における田口さんへのインタビューでは小説とサッカーにまつわる"ラヴリィ"な言葉を頂けたのではと考えています。是非ともご一読頂ければ幸いです(小島)。

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2006年11月12日

カバー写真(笹俣房子さん)のこと

061112.jpgsporeのようなテーマ主義の本にとって、雑誌の顔ともいうべきカバー(表紙)は重要な意味を持つ。特に恋愛という直球な特集を組むからには、カバーにも全体を引っ張っていくインパクトがほしい。そんな僕たちの思いを今回形にしてくれたのが笹俣房子という写真家だ。

そもそもの出会いは、友人の編集者・H嬢に招かれた某雑誌の出版記念パーティだった。そこで紹介されたのが彼女、つまり笹俣さんだった。立ち話ながらspore3号を見せて、その場で作品掲載に前向きな姿勢を示してくれたことが印象に残っている。

その年の冬の初め、待ち合わせた表参道の『LOTUS』に彼女は水色のコートと白い毛糸の帽子姿でやってきた。恋愛特集といっても、僕らの手元にはまだ作品は集まっていなかったし、4号がどんな本になるのか期待と同時に不安もあった。笹俣さんに会って、作品を見せてもらったのはそんな時期だった。

笹俣さんが当時制作していた作品はコンセプチュアルであると同時に、そこにはストーリー性が強く存在していた。写真雑誌も取り上げはじめた頃で、写真にはしぜんアッパーな勢いが感じられた。作品はもちろん、彼女の人間性に心を惹かれたということもある。彼女は少女性と熟女性が混じりあった魅力的な女性で、恋愛特集号のミューズとしてもぴったりだったからだ。そんな彼女に「恋愛」というテーマで作品をお願いするのは、僕らにとってエキサイティングなことだった。

彼女から掲載作品が届いたときには、すばらしい感動があった。
これまでsporeの掲げたテーマに対してこれほど力強くストレートなメッセージを返してきた人がいただろうか。自分の作品の展示スペースとしてではなく、今号のテーマに深くコミットして作品を制作してくれたことが何よりうれしかった。そうした作品からは、彼女の写真に対する本気がビリビリと感じられた。そのうちの一枚に、カバーにふさわしい写真があった。実際、4号の表紙になっている写真だ。それを見たとき、僕らはやっと4号の全体イメージを明確に思い描くことができたんだと思う。

出版までには長い時間を要することにはなったけれど、その間に僕らはPUNCTUMで行われた笹俣さんの作品展を見た。彼女の活躍を目にして滞りがちだった本作りへの思いを新たにしたのも事実だ。時折、励ましの連絡をもらったりもした。本が出た今、僕らは出版を辛抱強く待ってくれた彼女に感謝しつつ、これからの活躍を期待したい気持ちでいっぱいだ。彼女の作品をぜひ多くの人に見ていただけたらと思う。(トミタ)

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2006年11月19日

オレリア・オリタについて

061119.jpg彼女はカンボジアと中国の両親の間に生まれ、フランスで育った。手に職をつけて欲しいという両親の意向から薬学を学ぶ一方、学業と並行して、恋とセックスをテーマにした自伝的なマンガを執筆。そのマンガは大きな注目を浴びた。コミック・アーチストとしてのキャリアをスタートさせた彼女は、敬愛するフランス人コミックアーチストと親交を深め、彼の住む日本に来ることとなる。そして一昨年の冬、彼女はそのコミックアーチストに誘われて、世田谷のカフェで行われたsporeのイベントにやって来た。そこでぼくは初めて彼女-オレリア・オリタに出会った。

飛鳥新社から出た『JAPON』というアンソロジーで、オレリアの作品「台風」を読むことができる。『JAPON』は、日仏のコミックアーチストが「日本」をテーマに競作したもので、2年前の徳島県での滞在をテーマにしたこの作品は、アンソロジー中で最も人気の高い一篇だ。自由で大胆なタッチの絵と、誠実さとユーモア、そしてちょっとだけ切なさを感じさせるストーリーは、フランスでは類を見ないものだ。

その後、ぼくの展覧会に来てくれたオレリアに「spore」への寄稿をお願いした。彼女は快く引き受けてくれて、素敵な作品をくれた。それがここに収録されている「初体験」だ。彼女の作品を日本で2番目に発表することができたことを、ぼくは誇らしく思う。そして調子に乗ったぼくは、彼女にコラボレーションをお願いする。それもここに収録されている「winter song」だ。今年の正月、殆ど誰もいない公園を彼女と散歩しながら回したビデオと、彼女の描いた幾つかのイラストを主な素材とした作品だ。

その後、オレリアはフランスへ帰国して、日本での滞在を描いた『いちごとチョコレート(Fraise et Chocolat)』を発表。この本はテレビや新聞に取り上げられるほどの大評判になった。今やフランスで最も知られるコミックアーチストのひとりとなった彼女の作品が、この「spore」vol.4をきっかけに、ひとりでも多くの日本の読者に伝わることを願ってやまない(little fish)。

オレリア・オリタ『いちごとチョコレート(Fraise et Chocolat)』プレス・リリース:http://www.boilet.net/jp/fraise_et_chocolat.html

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