sporeのようなテーマ主義の本にとって、雑誌の顔ともいうべきカバー(表紙)は重要な意味を持つ。特に恋愛という直球な特集を組むからには、カバーにも全体を引っ張っていくインパクトがほしい。そんな僕たちの思いを今回形にしてくれたのが笹俣房子という写真家だ。
そもそもの出会いは、友人の編集者・H嬢に招かれた某雑誌の出版記念パーティだった。そこで紹介されたのが彼女、つまり笹俣さんだった。立ち話ながらspore3号を見せて、その場で作品掲載に前向きな姿勢を示してくれたことが印象に残っている。
その年の冬の初め、待ち合わせた表参道の『LOTUS』に彼女は水色のコートと白い毛糸の帽子姿でやってきた。恋愛特集といっても、僕らの手元にはまだ作品は集まっていなかったし、4号がどんな本になるのか期待と同時に不安もあった。笹俣さんに会って、作品を見せてもらったのはそんな時期だった。
笹俣さんが当時制作していた作品はコンセプチュアルであると同時に、そこにはストーリー性が強く存在していた。写真雑誌も取り上げはじめた頃で、写真にはしぜんアッパーな勢いが感じられた。作品はもちろん、彼女の人間性に心を惹かれたということもある。彼女は少女性と熟女性が混じりあった魅力的な女性で、恋愛特集号のミューズとしてもぴったりだったからだ。そんな彼女に「恋愛」というテーマで作品をお願いするのは、僕らにとってエキサイティングなことだった。
彼女から掲載作品が届いたときには、すばらしい感動があった。
これまでsporeの掲げたテーマに対してこれほど力強くストレートなメッセージを返してきた人がいただろうか。自分の作品の展示スペースとしてではなく、今号のテーマに深くコミットして作品を制作してくれたことが何よりうれしかった。そうした作品からは、彼女の写真に対する本気がビリビリと感じられた。そのうちの一枚に、カバーにふさわしい写真があった。実際、4号の表紙になっている写真だ。それを見たとき、僕らはやっと4号の全体イメージを明確に思い描くことができたんだと思う。
出版までには長い時間を要することにはなったけれど、その間に僕らはPUNCTUMで行われた笹俣さんの作品展を見た。彼女の活躍を目にして滞りがちだった本作りへの思いを新たにしたのも事実だ。時折、励ましの連絡をもらったりもした。本が出た今、僕らは出版を辛抱強く待ってくれた彼女に感謝しつつ、これからの活躍を期待したい気持ちでいっぱいだ。彼女の作品をぜひ多くの人に見ていただけたらと思う。(トミタ)
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