やまだないとさんは、独特の空気感を持つマンガを書く人で、東京は杉並に住む夫婦のさらりとした日常を描いた『西荻夫婦』や、パリの街角を舞台にこってりとした情事を描いた『ペリカン通り』など、数々の作品が世に出ている。最近では、永作博美の表情が印象的な、月桂冠の「つき」CMのストーリーボードを描いたりもしている。彼女の描く世界は、そのどれもが全く違う切り口、シチュエーションながら、どこか繋がった空気――やまだないとモードとでも言うべきものがある。それは優しくてエロティック、しかも残酷で切ないのだ。
彼女のマンガの読者は、話の続きを急くのではなく、いつまでもその世界に包まれていたくて、マンガのページをめくる。その感じが、好きな人に会っている時間に似ていると思い、『spore』の恋愛特集号にインタビューを掲載した。
個々の作品が描かれた状況や、彼女のマンガが作られる過程のテクニカルなあれこれよりは、やまだないと作品がもつモードそのものに迫りたい。そんな基準で編んだ36の問いに、Q&A形式で答えてもらった。誌面はちょっと詩のような雰囲気を持つレイアウトになり、その行間からはあのやまだないとモードが滲み出ている、ような気がする。
「ような気がする」というのはいかにも曖昧だけれど仕方がない。彼女の世界に断定は似合わない。泣けもせず笑えもせず、その両極の感情に引っ張られた中間に、彼女のマンガはあるのだから。日常と非日常の間のエアポケットのような世界。その世界の秘密を探るために、その世界の中で迷うために、ぜひ36の問いに対するやまだないとさんの答えを、読んでみて欲しい。きっと、かなり痺れると思う。彼女の世界に恋をしてしまうと思う。
(蜂谷)
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