生まれた場所のせいか、味噌煮込みうどんは大好物だ。この年末の帰省でも東海道新幹線を名古屋で降りるとさっそく地下街「エスカ」に向かった。そこにぼくのお気に入りのお店「山本屋本店」がある。この街にはもう一つ「山本屋総本家」という名前の味噌煮込みのお店があるので初めての人は間違うかもしれない。誰の回し者でもないが、ぼくなら山本屋本店をおすすめする。時間があれば、エスカ地下街のお店ではなく、栄白川まで足を伸ばすのもいいと思う。ただ、帰省=味噌煮込みの頭で帰途につくぼくは、駅を出たらまっすぐ地下街へ向かうことになる。
お店の前はいつ行っても長蛇の列だが、帰省ラッシュの時期となれば尚更である。ぼくもそこに並ぶものの先は長い。食い気をそらすのに、帰省の列車で読んできた本を再び出したり、ケータイを開けたり閉めたりとまったく落ち着かない。席について、ようやくほっとした気分になる。店の前にこれほどの列ができるのだから、止むに止まれぬ味噌煮込みへの情熱、いや執念を持つ人が大勢いるということだろう...などと想像するが、それは席についてからのこと。
前置きがずいぶん長くなったけれど、そろそろ食べ物の話もしたい。まず、最初に出てくるお漬け物がおいしい。白菜のロールと胡瓜と大根。季節によって組み合わせが若干変わると記憶している。おかわり自由とくれば、しなくては気が済まない。薄味のお漬け物を薄口醤油とおろし生姜でいただく。それをつまみながらしばらく待つと、メインの味噌煮込みがやってくる。ぐらぐら煮立つ鍋のふたを取り、それを取り分け皿とするのがこのお店の作法である。具材は鶏肉か豚肉か、季節によって牡蠣などの特別メニューもある。名古屋といえばコーチンと思うかもしれないが、ぼくのおすすめは断然黒豚である。鍋の真ん中には新鮮な生卵が落としてあり、これが余熱で半熟になる。ところで、味噌煮込みはご飯との相性も抜群である。うどんを食べたあとは、だし汁と一緒にご飯がさらに進む。結局、この日もおかわり三杯と相成った。
こうした経緯はなんとなく人に話すのも憚られる気がして、実家に帰っても内緒にしておくのだが、味噌のにおいは以外と染みつくのでたちまちバレてしまう。もちろん、バレるのは味噌のにおいのせいではなく、ぼくの行動パターンが読まれているからだとは思うが。とにかくぼくは名古屋駅につくと、まずこうして帰省の喜びを味わう。(ト)
※ごちそうさまでした。写真は、そのうちもっとおいしいものに差し替えます。