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2005年08月 アーカイブ

2005年08月23日

全く相反する性質をもつ二つのものが一つになる瞬間

地震のとき、いつも思いだすのは自分が子供の時のことです。強い地震が起こると決まって、僕は当時2階にあった自分の部屋を猛烈なスピードで飛び出し、神業のごとく階段を一気に駆け降り、玄関を開け放って庭にヘッドスライディングしていました。いつも親には笑われていましたね。そして、いつしか、僕は揺れに対して鈍感になり、終いにはここで一思いに死んだら楽だなぁ(笑)、なんて考えるような、そういう大人になってしまっていたのです。

歳をとるにつれ、恐ろしいことは減っていくのでしょうか?知が増えることによって、アクシデント(特に、前向きな)は減っていくのでしょうか?まだ僕にはわからないけど、やはりそれはつまらない。あるいは、そういうことが自分にとって、今最も恐怖すべきことでしょうか。少しでも立ち止まったらシニシズムに犯されることなんて逆に簡単である今の時代、やはり僕は「新しさ」を問いていきたい。どんな些細なことについてでも。

調理場という戦場―「コート・ドール」斉須政雄の仕事論

最近、ある料理人の本を読みました。コート・ドールというフランス料理屋のオーナーシェフのエッセイです。フランス料理は歴史が長い分、新しい味をつくりだすこともまた難しく、アレンジャー的な料理人はいても、クリエイター的な料理人はなかなかいない、と言われてます。そういった情況において、料理人斉須正雄はこう語ります。

「何かを組み合わせたり振りかけたりすることによって、別な新しい価値が生まれる。・・・アスパラガスはアスパラガスの性質とは相反するような異物を入れることによって、アスパラガスになる。『愛が最も気高く最も神聖な行為であるのは、愛がその中に愛でないものまでも包み込んでいるからだ』という言葉がありますが、それは料理においても、その通りだなぁと思います。」(『調理場という戦場』斉須正雄)

全く相反する性質をもつ二つのものが一つになる瞬間。たぶんこれはアレンジではなく、創造であり、「新しさ」であるということなんだと思います。自分も、こういったことを少しでもいいから意識して生活していければいいな、と感じています(小島)。

2005年08月25日

あまりにもシリアスが故に滑稽な

先週は夏休みだったんですけど、風邪をひいてしまい、寝込んでいました。そんなもんだから、外にも出ず、家の中で静かに、あまり動かず、要はだらだらと、過ごしていました。しかしながら今振り返ってみると極めて贅沢かつ幸福な時間であったように思えます。だらだらな時間、だらだらな身体、だらだらな気分。なんと、素晴らしいことか。

アイズ・ワイド・シャット 特別版
そんなだらだらインドア・アイテムのなかにDVDがあり、そして僕自身もだらだらが故にそれに触れることになり、キューブリックの『アイズ・ワイド・シャット』をだらだらと観たのでした。しかしながら、というか、僕のだらだら状態に反し、映画の出来栄えはスペシャルなものでした。突き抜けた美意識、無防備な欲望、そして、すがすがしいまでの滑稽さ。もはや離婚してしまったトム・クルーズとニコール・キッドマンが実際の夫婦を演じるのですが、特にトム・クルーズ、素晴らしいです。こんなに素晴らしい俳優だとは思わなかったですね。

彼は自分の妻の浮気願望に悩まされ、幻覚まで見るのですが、彼の終始魅せる超無防備な表情にやられました。彼は常に嫉妬と誘惑との間を振り子のように揺れ続けるのですが、その振り子が最大幅に振り切れた瞬間の彼の無防備な表情によって、映画が出来ている、と言ってもよいのではないでしょうか。彼の嫉妬にもだえる瞬間の表情。彼の誘惑にあまりにも簡単に(笑)負けてしまう瞬間の表情。たぶん、あまりにもシリアスであるが故に滑稽に見えてしまう役というのは、トム・クルーズのためにあるのかもしれません。超お奨めです。

スター・ウォーズ エピソード3 / シスの復讐
また、映画と言えば最近2本劇場で観ました。1本目は『スターウォーズエピソード3』。そしてもう1本目は『運命じゃない人』、です。『スターウォーズエピソード3』は多分女の人なら「ああ、なんか光る棒を振り回しているヤツね」なんていうリアクション程度のものかと思われますが、僕は終始この映画を涙を流しながら観たのでした。たぶんシリーズ最高傑作でしょう。このスターウォーズシリーズは、ギリシア神話の最も血なまぐさい部分の引用が強く現れていて、そこにやられてしまいます。例えば、奇形(アナキンやルークの腕や足)、 近親相姦(ルークとレイア)、そして、父殺し(ルーク→アナキン)といった、神話における普遍的な暴力性の高いモチーフの使われ方が大きな魅力になっているかと思いますね。『エピソード3』はそんな神話の起源が描かれていて、個人的にはとてもよかったです。

運命じゃない人
『運命じゃない人』のほうは何も予備知識なしで観ると、あっと驚かされる、とても構造主義的な作品です。何度となく視点がずらされ、そして最終的にはユーモアに着地する構成はただただ快心、と思います。ただし、物語が構造に傾きすぎると、人間描写が薄れてしまう、という傾向もあるのですが。『スターウォーズ』がある歴史観にそった、垂直展開の構成をもつ物語であるとしたら、この『運命じゃない人』は同時多発的な水平展開をもつ構成であり、極めて現代的な物語である、と言えるでしょう(小島)。