
恵比寿ガーデンプレイスの東京都写真美術館のブラッサイ・ポンピドゥーセンター展に行って来る。ブラッサイの表現の変遷がわかるように時代別に作品が展示され、時代ごとの作品の傾向というものがクリアにわかる展示になっている。「現実を極限まで突き詰めていけば、それは幻想的なものへと昇華される」とは、ブラッサイ自身の言葉。特異で尚且つセンセーショナルなモチーフは一つもないけれど、彼の作品のどれもが幻想的であり、ストレートでさえもある。プリミティヴなまなざしが、まなざし自体のプリミティヴさ、方法論へとつながり、そしてプリミティヴであるが故の「あちら側」の世界が浮かび上がってくる。
特にパリの夜のシーンを撮影した初期作品はどれも傑作ぞろいで、見ていて鳥肌が立った。構図の完璧さ、男女の触れ合いの普遍的なイメージ(特に一組のカップルがブランコに乗りながらキスするショットは、いつの時代でも美しくキャッチーだろう)、そして闇の中に浮かびあがる怪しい光。都市のアンダーグランド的なシーンの連続で、ドキュメンタリー的でさえある、と感じられるけど、どのショットも今のファッション写真的な、完璧なるセットアップが存在する。親密さと怜悧な構築性が同居する世界、というか。彼の、ルーマニア出身である「異邦人」としての新鮮で生々しい現実世界への介入方法と緻密な計算とが、あまりにも見事にミックスされている。霧に包まれた闇。娼婦と男。鏡に映し出された、女の横顔。現実が異界へとリンクする瞬間。
それと面白いなぁ、と思ったのが「落書き」シリーズや、シューレアリズム時代の作品郡。パリの街に書かれた落書きを撮影した膨大な作品群は、とてもおしゃれで、楽しさに溢れている。アンディ・ウォーホールやバスキアのような、ポップ・アートにも通じるコンテンポラリーさは、本当に瑞々しい。またシューレアリズム時代の作品はブラッサイの女性性へのオブセッション、フェティズムというのが全面に現れていて、それも興味深かった。女性の腰とかお尻に極度にフォーカスがあてられ、デフォルメされている。いや、僕自身の趣味はだいぶ違うんだけどね(笑)。 (小島)
