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2006年12月 アーカイブ

2006年12月07日

料理人も料理も、センチメンタルの化身である

キッチン・コンフィデンシャル

イタリア料理っていいよなあ、と最近は感じています。外で食べるのでもいいのですが、自分でたまにつくってみたりしています。『キッチン・コンフィデンシャル』を書いたアンソニー・ボーデインはイタリア料理について、こんな風に語っています。

「(イタリア)料理はどれもシンプルだけど、ここで言うシンプルというのは手抜きとか単純という意味ではない。いくつかの良質な素材、それも3つか4つ正しく用いて組み合わせれば、素晴らしい料理が出来き、時には驚くべき味わいさえ出すことが出来る、高貴にして純粋かつ素朴な料理である」

なんてことを言っています。なんて素晴らしいんでしょうか。やはりこういう料理にまつわる本を読んでいると自分でもつくってみたくなります。ちなみにこの『キッチン・コンフィデンシャル』を僕はもう何度繰り返して読んでいるかわかりません。ハードボイルドで技巧的な文体と、破天荒でカオスそのものであるキッチンの風景がクロスオーヴァーする、激クールさに痺れます。また、料理のみならず、人間のひたすら弱く、狡猾でだらしがない部分への矛盾した愛情表現が詰まっていますね。「料理人も料理もセンチメンタルの化身である」。なんて、ヤバ過ぎます。

そんな感じで影響されまくり、先月、自分でもちょっとしたコースをつくってみたのでした。前菜はホタテとホワイトマッシュルームのカルパッチョ。パスタはカッケソースのパスタ。主菜は豚肉の白ワイン煮。という組み合わせになりました。

カルパッチョはホタテを薄切りにし、オリーブオイルを垂らして塩コショウをした後、薄くスライスしたマッシュルームを乗せます。買ってきたホタテはうっとりするほど甘く、生のマッシュルームとよく合います。ホタテの柔らかい食感とマッシュルームのサクサクとした食感のコンビネーションが予想以上に面白いです。いつも思うのですが、イタリア料理の前菜というのは、どれもはっとするような驚きや新鮮さに溢れているように思えます。前菜を口にすることによって五感がクリアになり、これから続く料理に対して正しい受け止めが可能になる、という気がします。

パスタのカッケソースは真っ赤によく熟れた大ぶりのトマトを使います。種をちゃんと取り出し、サイコロ状に切ったものをオリーブオイル、塩コショウ、バジルと絡めてソースをつくります。種の部分を取るとトマトの酸味が抜けてまろやかな味になりますので、めんど臭がらずにやるのがよいでしょう。しかしながらこの日買ったちょっと高めのパスタ(¥700ぐらいしました)は少し太めのものでして、カッケソースとはあまり合いませんでした。細めのものがたぶん合うんでしょう。ただしパスタそのものは美味かったです。小麦粉の香りと味がとても強烈で、感覚としてはほとんどうどんに近い。案外醤油をぶっかけて食べても美味しいのかもしれません(笑)。乾いたパスタの表面はちゃんとザラザラしているのがはっきりわかります。これによってソースにちゃんと絡みやすくなっているんですね。このパスタだと肉系のソースとかクリーム系のソースが合うんだろうなと思いました。

豚肉は肩ロースのブロックを買ってきて、まず塩コショウを豚肉にすり込み、同時に肉の表面にタイムやローズマリーを貼り付けます。香草は適当にちぎり、とにかくペタペタと肉の表面に貼り付けるので問題ないです。十分香りがつきます。それを鍋に入れてオリーブオイルをしいて肉の表面をこんがりと焼き、そして肉が半分つかるぐらいの量の白ワインをどぼどぼと注いでは30分ひたすら煮ます。これは非常に美味かった。思わず、ふふふふ、と至極爽やかで自然な笑みがこぼれてしまう感じでしたね。香草とワインの香り、それに豚肉の風味が入り混じってなんとも幸せな香りです。ポイントはあまり高温で煮込まないことだと思います。豚肉はあまり高温で処理すると肉汁が外に出てしまいますので。低温でしっかりとワインで煮込まれた肉は心地よく柔らかく、味も繊細で、ワインと最高に合うのではないでしょうか(小島)。

2006年12月22日

ラヴぃ

ラヴぃ

もはや家で音楽を聴くときはもっぱらiTunesで、Macintoshにスピーカーを繋げて聴いていることが多いです。iTunesのトップレートを見ると今年はこんな音楽を聴いたよなあ、というのがよくわかります。自分のトップレートの1番は恥ずかしいんですが、リップスライム×くるりの『ラヴぃ』となっています。一時期中毒患者みたいにこの曲ばかりを聴いていました。だってタイトルが『ラヴぃ』ですよ?「ラヴまでいっていないけどどうやらラヴっぽくない?(語尾上がる)」というニュアンスなんでしょうか。やられました。

以前は10ccの『I'm Not In Love』中毒症状にかかっていまして、この曲がトップレートのトップを爆走していたんですが、ようやくこの曲の順位が落ちてきてホッとしています(笑)。トップレートのリストはロック系の曲が基本的に上位を占めますが(Led Zeppelinだったりsyrup16gだったり)、最近の傾向としてはチャーリー・パーカーやマイルス・デイヴィスのようなJAZZ系の曲が追走を始めています。

そしてJAZZ系を猛然と追いかけているのがエレクトロニカ系で、HerbertとI'm Not A Gunがそうですね。特にこの二組のユニットはライヴも行き、素晴らしかったです。HerbertはエレクトロニカとJAZZバンドが見事に融合し、何故かピンク色のガウンを羽織ったマシュー・ハーバートががに股で観客の声や自分の声、そしてペットボトルを壊す音までをその場でサンプリングし、曲をつくってしまうパフォーマンスには圧倒されました。I'm Not A Gunもバックトラックはエレクトロニカなんですが、そこにドラマーとギタリストのプレイが融合するという、かなりスリリングなパフォーマンスでした。特に西本さんのギターが最高で、ギターの音がホールの中をうねりながら駆け登っていく。という表現が大袈裟ではない演奏で記憶に残りました(小島)。

2006年12月29日

2006年のホラー映画を振り返る

どうもこんにちは。皆様におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。
今年一年を振り返ると世の中いろいろなことがありましたね。振り返るときりがありません。映画もたくさんありました。観た映画のことを振り返るときりがないのですが、今年観た映画の中で、リメイクものに限定して軽く振り返ってみたいと思います。いや、リメイクものでも多すぎるので、ここはホラーに限定することにします。今年観た、ホラーのリメイクものを振り返ります。そういうことでよろしくお願いします。

オーメン4『オーメン』は、主演のイギリス大使が深刻な程度においてまずいという印象を持ちました。おにぎりみたいな滑稽な顔で、オリジナルのグレゴリー・ペックと比べようがない。顔は非常に重要ですね。基本的にオリジナルの前では最高にどうでもいい映画ですが、ひとつだけ面白い点があるとすれば、乳母役がミア・ファローであることでしょう。『ローズマリーの赤ちゃん』で、悪魔の子を孕んだと大騒ぎしていた若妻が、30年の歳月を経て、ここでは、悪魔の子の乳母を粛々と務めます。このミア・ファロー、熟成30年という風格です。このキャスティングだけは感心しました。


ザ・フォッグ《デジタルニューマスター版》『ザ・フォッグ』は、ジョン・カーペンターのリメイク。霧の中から100年前に殺された移民の幽霊が現れて、港町の住民の子孫に復讐をするという話です。オリジナルは、幽霊たちは刃物や鋭器を振り回し、美女から蹴りを受けると転んだりして、黒沢清の指摘するように、幽霊というよりもぼろきれを纏った暴漢にしか見えませんでした。その点、リメイクの方はCGを駆使して亡霊が亡霊らしく描かれているという点、語りで済ませていた100年前の移民の悲劇が映像化されているという点がよいと思います。しかし肝心の神父の存在が非常に小さい扱いになっている点が致命的です。オリジナルの神父は「先祖の罪を、私が償うのだ」という気概を持って殉じますが、こっちの神父はずっと酒浸りで、何考えているかろくに口に出さないうちに殺されてしまうのでした。本来、リメイクの意義は換骨奪胎にあると思いますが、これではただの骨抜きにされてしまった感があります。


黒沢清監督 DVD BOX 「PULSE」『PULSE』は、黒沢清の『回路』のリメイクです。飛び降り自殺、ジェット機墜落など主な見せ場は殆ど再現されていますが、こちらは逆に幽霊が物理的な怪力でもって襲い掛かってくるようになっている点が非常にまずいでしょう。黒沢清の描く幽霊は、「何もしなくても、ただそこにいるだけで怖い」ものでした。殊更に刃物や鋭器を振り回したりせず、ただ其処に居る。でも目があっただけで致命的にまずいという感じ。その点、こっちの幽霊は、コインランドリーの乾燥機の中でもみくちゃになりながら大騒ぎしたり、車の屋根に上ってフロントガラスをばんばん掌で叩いたり、カーブで振り落とされたりしますから、観光地の猿みたいです。バナナかみかんをあげたらおとなしくどっかに行くのではないかという感じです。とにかく幽霊を猿のように描いてしまった以上、人と幽霊の境目を曖昧にさせるというオリジナルのテーマ性は跡形もありません。


最後にニコラス・ケイジ主演の『WICKER MAN』。少女の失踪事件を調査しに、ある島を訪れた警察官が、奇妙な島民に翻弄される話です。オリジナルは、歌と踊りがあったのですが、こっちにはありません。その代わりに、ケイジ扮する警察官には無駄なトラウマが付与されています。歌と踊りがないので、ただの陰惨な映画でした。

来年はもう少しましなホラーのリメイクが観られるといいですね。
それでは皆さんよいお年を。


little fish