イタリア料理っていいよなあ、と最近は感じています。外で食べるのでもいいのですが、自分でたまにつくってみたりしています。『キッチン・コンフィデンシャル』を書いたアンソニー・ボーデインはイタリア料理について、こんな風に語っています。
「(イタリア)料理はどれもシンプルだけど、ここで言うシンプルというのは手抜きとか単純という意味ではない。いくつかの良質な素材、それも3つか4つ正しく用いて組み合わせれば、素晴らしい料理が出来き、時には驚くべき味わいさえ出すことが出来る、高貴にして純粋かつ素朴な料理である」
なんてことを言っています。なんて素晴らしいんでしょうか。やはりこういう料理にまつわる本を読んでいると自分でもつくってみたくなります。ちなみにこの『キッチン・コンフィデンシャル』を僕はもう何度繰り返して読んでいるかわかりません。ハードボイルドで技巧的な文体と、破天荒でカオスそのものであるキッチンの風景がクロスオーヴァーする、激クールさに痺れます。また、料理のみならず、人間のひたすら弱く、狡猾でだらしがない部分への矛盾した愛情表現が詰まっていますね。「料理人も料理もセンチメンタルの化身である」。なんて、ヤバ過ぎます。
そんな感じで影響されまくり、先月、自分でもちょっとしたコースをつくってみたのでした。前菜はホタテとホワイトマッシュルームのカルパッチョ。パスタはカッケソースのパスタ。主菜は豚肉の白ワイン煮。という組み合わせになりました。
カルパッチョはホタテを薄切りにし、オリーブオイルを垂らして塩コショウをした後、薄くスライスしたマッシュルームを乗せます。買ってきたホタテはうっとりするほど甘く、生のマッシュルームとよく合います。ホタテの柔らかい食感とマッシュルームのサクサクとした食感のコンビネーションが予想以上に面白いです。いつも思うのですが、イタリア料理の前菜というのは、どれもはっとするような驚きや新鮮さに溢れているように思えます。前菜を口にすることによって五感がクリアになり、これから続く料理に対して正しい受け止めが可能になる、という気がします。
パスタのカッケソースは真っ赤によく熟れた大ぶりのトマトを使います。種をちゃんと取り出し、サイコロ状に切ったものをオリーブオイル、塩コショウ、バジルと絡めてソースをつくります。種の部分を取るとトマトの酸味が抜けてまろやかな味になりますので、めんど臭がらずにやるのがよいでしょう。しかしながらこの日買ったちょっと高めのパスタ(¥700ぐらいしました)は少し太めのものでして、カッケソースとはあまり合いませんでした。細めのものがたぶん合うんでしょう。ただしパスタそのものは美味かったです。小麦粉の香りと味がとても強烈で、感覚としてはほとんどうどんに近い。案外醤油をぶっかけて食べても美味しいのかもしれません(笑)。乾いたパスタの表面はちゃんとザラザラしているのがはっきりわかります。これによってソースにちゃんと絡みやすくなっているんですね。このパスタだと肉系のソースとかクリーム系のソースが合うんだろうなと思いました。
豚肉は肩ロースのブロックを買ってきて、まず塩コショウを豚肉にすり込み、同時に肉の表面にタイムやローズマリーを貼り付けます。香草は適当にちぎり、とにかくペタペタと肉の表面に貼り付けるので問題ないです。十分香りがつきます。それを鍋に入れてオリーブオイルをしいて肉の表面をこんがりと焼き、そして肉が半分つかるぐらいの量の白ワインをどぼどぼと注いでは30分ひたすら煮ます。これは非常に美味かった。思わず、ふふふふ、と至極爽やかで自然な笑みがこぼれてしまう感じでしたね。香草とワインの香り、それに豚肉の風味が入り混じってなんとも幸せな香りです。ポイントはあまり高温で煮込まないことだと思います。豚肉はあまり高温で処理すると肉汁が外に出てしまいますので。低温でしっかりとワインで煮込まれた肉は心地よく柔らかく、味も繊細で、ワインと最高に合うのではないでしょうか(小島)。

