足元の技術はゼロに近く、フィジカルも強いとは言えず、目を見張るようなスピードもない。しかしながら無駄に甘いマスクと詐欺師的なゴールセンスだけは過剰にある。フィリッポ・インザーギというのは、そういうかなりの欠落とピンポイントな特長を持った選手だ。そんな彼がUEFAチャンピオンズリーグ決勝で2点を決めた。痺れた。なんだか目頭が熱くなった(笑)。
そもそも。足でも頭でもなく、肩でゴールを決める。という、彼の恐ろしく泥臭いセンスには目を見張ってしまう。なんでこうも不器用なゴールばかりを決めることが出来るのか。アレックス・ファーガソンは彼のことを「オフサイドラインで生まれた」と評したけど(爆笑)、とにかくゴール・エリアの近くに抜け目なくポジションを取り続けることが彼の「本能」なんだろう。例えばインザーギがハーフウェイラインにいたらどうなる?たちまち彼はボールを失ってはカウンターの餌食になるに違いない。相手ゴールの近くにしかいれない男(技術的にも身体的にもメンタリティー的にも)。そんなストライカーの凄みをこの決勝戦では感じることが出来た。
あの、DFラインの裏を狙う、狡猾で泥臭いウェーヴの動き。そしてワンチャンスを決める勝負にかけるメンタリティ。奇跡的としか言いようがない。この試合のハイライトは2点目。カカがまったくどフリーで、何か時間が止まったようにゆったりとノープレッシャーでボールを持った、あの瞬間だ。リヴァプールDF陣は棒立ちで、オフサイドをかけるしか術がない(しかもそれが恐ろしく失敗に終わる確立が高いことを本能的に感じながら)。カカがボールを持った瞬間の、インザーギのDFの視界から消え去る素早い動き出しは、もはや芸術の域に達していた。
ポストプレーやドリブルといった効果的な崩しのプレーは全くと言っていいほど期待できず、技術的にも貧弱。そんな選手が、ボールを貰う前の神業的な動きとどんな形でもシュートをねじ込もうとする強烈なメンタリティのみで、フィールドに君臨する。だからこそ、サッカーというのは面白いのだ、と実感してしまった(小島)。

