中目黒のプライベートな映画鑑賞会にて、ジョン・カサヴェテスの『オープニング・ナイト』を観る。こりゃあ素晴らしい。物語の冒頭で、主人公の女優は自分の若い女性ファンが交通事故で死ぬところを目撃する。彼女は若さの象徴であり、演技を超えた、ただ無償で愛する存在としての象徴でもある。女優としてのキャリアの行き詰まり、あるいは自分自身の人生の行き詰まった状態が、二重の喪失として表現される、という王道な文学的パターンで作品はスタート。
作品の中ではいくつもの世界のレイヤーが重ねられていく。舞台における演技、演技のリハーサル、舞台裏、舞台を見ている観客、舞台を離れた日常、日常における幻覚…そういった感触の違う「現実」が交差し、主人公は翻弄されていく。が、そういった現実に打ちのめされた後に彼女は最後の力を振り絞り、再び舞台の上に登ることを選ぶ。そして自らの即興性のある演技によって、彼女は複数の平行しながら存在するレイヤーを統合することを試みる。構築された演技から即興へ。即興から根源的なエモーショナルなものへ。彼女は「情熱そのもの」としか言い様のないものに到達する。
舞台の裏側から役者達がライトに照らされて映し出された瞬間、観ていて目頭が熱くなった(小島)。

