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『ヒトの変異』 A・M・ルロワ

「遺伝」に関して、奇形という切り口から解き明かす試み。著者は生物学者で、キワモノ趣味とは無縁の真摯なアプローチ。

この本によると受精したばかりの胚は健康に害をもたらす変異を平均300は持っているのだそう。マイナスの因子を持ってない人間などいないのだ。そういった不完全な人間同士の遺伝子が、受精によってかけ合わさった結果、奇形という重篤な変異が出現するかどうかは、ほとんど賭けだ。

子どもを持たない私は、「ずいぶん危険なゲームに打って出るなー」なんて思いつつ、どこかでそんな恋人たちの勢いが羨ましくもある。博打とも思えるような欲望の産物こそが、種を存続させ、進化を促すエネルギーなのだから。

「私たちはみなミュータントなのだ。ただその程度が、人によって違うだけなのだ」と、筆者。

私はなぜ私なのか?…という問いを、生物学的立場から俯瞰すれば、螺旋状の長大な流れが見えるというわけだ。その流れは、全ての可能性を飲み込んでなお、きらきらと美しい。奇形に関する重い歴史や、難解な生物学的考察を読み進めるのは辛かったが、最終的にはそんな気分になっていた。
蜂(http://hachi0519.cocolog-nifty.com/blog/)

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